ちくわブログ

のらりくらりのちくわさんです。

アナグマの死に嘆く人はゴキブリの死に嘆くのだろうか

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togetter.com

 自分のTL上でちまちまこの件に関して言及するRTが流れていたものの、元ツイートを見てないので言及は避けてたんだが、事情を理解すれば何の事はなく、元ツイートの中の人の言動は何もヘンでも何でもないんだけども、他者の価値観や文化の差異を理解できない一部の人が未だに暴れているネットあるある地獄。

 

  そも日本国において、動物とは基本的に物品扱いで、人間が殺傷された場合とは異なる扱いを受ける。もちろん動物愛護法で守られている一部の動物についてはその限りではないが、基本的に間口は狭く、大多数の人が勘違いしているように、動物なら何でもかんでも保護対象というワケではない。

第十条  動物(哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものに限り、畜産農業に係るもの及び試験研究用又は生物学的製剤の製造の用その他政令で定める用途に供するために飼養し、又は保管しているものを除く。以下この節から第四節までにおいて同じ。)の取扱業(動物の販売(その取次ぎ又は代理を含む。次項、第十二条第一項第六号及び第二十一条の四において同じ。)、保管、貸出し、訓練、展示(動物との触れ合いの機会の提供を含む。次項及び第二十四条の二において同じ。)その他政令で定める取扱いを業として行うことをいう。以下この節及び第四十六条第一号において「第一種動物取扱業」という。)を営もうとする者は、当該業を営もうとする事業所の所在地を管轄する都道府県知事(地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項 の指定都市(以下「指定都市」という。)にあつては、その長とする。以下この節から第五節まで(第二十五条第四項を除く。)において同じ。)の登録を受けなければならない。

第四十四条  愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
2  愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、百万円以下の罰金に処する。
3  愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する。
4  前三項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
  一  牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
  二  前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

動物の愛護及び管理に関する法律

 もちろん、動物はモノ扱いだから何をしても良いというワケではない。あくまでも基本は法律に則り、それ以外に関してはケースバイケースでしかない、というそれだけの話。

アニマルライツという概念があるが、その話をしだすと本筋から逸れまくるのでここでは省く)

 

 我々人間という存在は、そもそも何かを殺さなければ生きられない生物である。この地上において、それらから逃れている人は恐らく一人もいない。赤子でさえ、ある意味で考えれば他の精子を見殺しにして生き残るという生存闘争に打ち勝ってこの世に生まれてくるのだから、今現在において「オレ様、霞しか食ってねえわw」という仙人ですら、その事実からは逃れられない。多分、逃れられるのはお釈迦様くらいだろうが、お釈迦様も悟ってから普通に肉とか食ってるからな。

 そも単純に食べる以外にも、我々は日常的に何かを殺している。カを見つければ掌で叩き潰すし、ハエを見かければハエタタキで打ちのめし、ゴキブリを見かけたらゴキブリホイホイを仕掛けて彼らが死ぬのを手ぐすね引いて心待ちにする。

「何云ってんだ!カやハエやゴキブリは動物じゃなくて昆虫じゃないか!」

 残念、生物学的には、昆虫は節足動物と呼ばれる動物なんだ。

 今回のようなケースが斯様に問題になりがちなのは、身近な動物や哺乳類だけを特別・特例と看做す傾向が強く、またそれらの正当化に法律ではなく、個々の倫理観や道徳観が用いられている事が極めて大きいように感じる。

 法律を論拠としない人たちは皆一様に「法律は絶対ではない」と口にするが、少なくとも法律に則って問題がない言動や表現をする人たちより、法律に則れば明らかに問題である事を自覚するしないに関わらず、自らの言動や表現の論拠として倫理や道徳を口にして自己正当化に明け暮れる人たちのほーが、社会的には極めて有害と云わざるを得ない。

 しかして、その社会的に有害な人たちが口にする道徳や倫理は一般常識から見て正しい事であるので、そこで大きな齟齬が生じる。その結果生まれるのが「ソーシャル・ジャスティス・ウォーリアー(SJW)」なのですな。

 元々この「SJW」っつーのは肯定的な意味で生まれた概念で、女権拡張や市民権など、文字通り公平で平等で公正な社会正義を実現しようとする人たちの言動ないし、その人たちを賞賛する言葉であったにも関わらず、今こうして全く別の概念で否定的に捉えられるようになってしまった背景にあるものが「正義の暴走」である事は想像に難くない。

「動物を無闇に殺してはいけない」という倫理観や道徳観はまさにその通りで、それ自体は否定する必要がない。一方で、どうしても殺す必要がある場合もある。それは食事の材料として消費するため、あるいは実験動物として消費するため、あるいは危険な動物を駆除するため。それらを否定する必要もまた存在しない。これらは一見矛盾しているように見えるが、「動物を無闇に殺してはいけない」であり、「動物を殺してはいけない」ではない以上、そこに矛盾はない。そこに矛盾があると感じている人は、「動物を無闇に殺してはいけない」を「動物を殺してはいけない」に挿げ替え、それを自らの道徳や倫理としているだけでしかない。

 動物を嬉々として殺す事を問題にしている人もいるが、それこそ道徳や倫理観の問題に過ぎない。ひとまず動物愛護法を置いておくとして、例えば街中を闊歩しているだけの無害な犬猫をいきなり打ち殺せば道徳や倫理的側面からの批判は免れないだろうが、その犬猫が人間を襲った場合はさてどう対処すべきか。人を襲う危険な害獣として駆除する事に賛同するだろうか? それとも、それでも犬猫を殺す事にためらいを浮かべるだろうか? 危険な害獣を駆除して、あるいは駆除されて喜ぶ人たちを、動物を無残に殺した人非人扱いするのは果たして正しい事だろうか?

 

 今回のケースで云えば、法律的には何の問題もない。

 駆除/狩猟した動物の屍骸をインターネットにアップロードする事について各々が侃々諤々する事はあろうが、これも法律的には何の問題もない。グロ画像をネットに公開して罪になる法律が日本にあるならば、それはオレの浅学故の誤りなので存分に指摘して欲しい。

「後ろからバットでフルスイングしてぶち殺してやったw」という表現を問題にする向きもあるが、これも対象となる動物が駆除対象の害獣である以上、表現の自由の範疇に留まる。「ゴキブリを殺したw」とドヤ顔する人を咎めるゴキブリ愛好家もいるだろうが、それが少数だろうが多数だろうがその多寡はそもそも関係なく、本来害虫や害獣の駆除に関し、当事者以外が横から物申す事そのものがナンセンス。

 これらのナンセンスな言動は、特にネット上においては一般的な害獣(例えばヒグマやシカ)駆除などにも見られる。このように、法律や当事者事情を無視して「動物」に感情移入しすぎる言動が、道徳・倫理といった曖昧な価値判断基準から「正義」と看做される傾向がネット上では極めて強い事が、今回のような悪例を生み出す原因になってるのかもしれない。

400キロのヒグマ射殺に関するバイアスのかかったまとめ - Togetterまとめ

 もちろん、悪例とはアナグマを駆除した高校生の言動ではなく、彼(彼女?)を悪人として批判している連中の事であるのは云うまでもないが、念のため。

 件の高校生の問題は、自分のプライバシーが判別可能な情報をネット上に提示していた点と、Twitterを家族や友人など卑近な間柄の人たちとのコミュニケーションツールとして利用しつつも、鍵をかけていなかった事くらいだろう。それ以上に、法的に何の問題もない言動を道徳や倫理を論拠とした正義感からあげつらった人の罪は重いし、その人が自分の誤りに気付いて批判を撤回したにも関わらず、何時までも振り上げた拳を下ろせぬままブンブンパンチを繰り返している駄々っ子状態のSJWの性質は極めて悪い。