ちくわブログ

のらりくらりのちくわさんです。

「行政の指導に従わない場合は罰則ありだからな。障害者差別解消法は。」と云うデマを垂れ流す id:kuborie は、今日も元気に妄想を夢見る。

www3.nhk.or.jp

努力義務だから対応しなくていいと言ってた id:tikuwa_ore はいずこ。/行政の指導に従わない場合は罰則ありだからな。障害者差別解消法は。

http://b.hatena.ne.jp/entry/341064403/comment/kuborie

 

 凄いな、障害者差別解消法の条文、上記のNHK記事の動画及び本文の何処にも「行政指導に従わないと罰則あり」なんて書かれてないのに、勝手にあると思っちゃうんだもん。

 そもそも、障害者差別解消法に基づいた行政指導は、法的に強制できない事を任意で促すために行われるものであり、強制力がない=罰則がない=努力義務って話なんだけど、本当に妄想が論拠のバカで呆れるばかり。

 多分 id:kuborie は、行政指導の意味どころか、行政指導を定義した行政手続法すら知らないんじゃないかな。

行政手続法2条6項 (行政指導の定義)
行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

 条文を読めば妄想が論拠のバカ以外には誰でも理解出来ると思いますが、行政指導とは処分を伴わない指導・勧告・助言等であり、法律でしっかり「処分に該当しない」=「罰則を与えてはならない」と書いてあるのに、行政指導に反したからと罰則を与えるなんて、それこそ法律違反ですよ。アホですか。

 

 障害者差別解消法の罰則規定に関しては、こちらのエントリで詳しく解説したのでここでは詳細を省きます。条文の内容や詳しい解説が読みたい方はそちらを参照してください。

 さて、簡単に説明しますと、同法の罰則規定は第26条「協議会における秘密保持義務違反」と、第25条「助言・指導・勧告された行政指導に対し、報告を怠る、あるいは虚偽報告をした場合の報告義務違反」です。

 ひょっとしたらこの「報告義務違反」を「行政指導に従わないと罰則あり」と誤読している可能性がありますが、 第25条はあくまでも行政指導によって報告を求められた場合において「報告を怠たったり、虚偽報告をした場合に違反」という規定であり、「行政指導に従わないと違反」ではないんですね。

 

( ´Д`)「わし思うんやけど、多分ひょっとしたら行政処分って言葉があるから、そのせいで行政指導に反したら処分されると勘違いしてるんやないかな?」

 

 あー、そうかも。

 行政指導で行政処分が下るケースっつーのは、行政指導の根拠となってる法令の上位となる法律の条文で規定された法の委任で、「下位法令に罰則を規定しても構わない」という条文がある場合だけなんだね。この条文がないのに下位法令で罰則を科してしまうと、それこそ法律違反になっちゃう。

 そもそも行政指導は「法令に規定のない、罰則ナシの裁量的行政指導」と、「法令に規定がある、罰則アリの規制的行政指導」に分かれるんだけど、マスメディアではどちらも「行政指導」で一括りにしているから勘違いしちゃうんだろうね。

 もちろん、障害者差別解消法に基づいた行政指導は裁量的行政指導ですよ。障害者差別解消法の条文に「下位法令に処分規定を作ってもよい」という条文がないからね。

 

 

 例えば、省庁・主務大臣より障害者差別解消法に基づいた行政指導が下され、その報告を求められた場合でシミュレーションすると、こうなります。

  1. 行政指導に応じ、その対応に努める。協議した計画、実施した案件などを報告する。→セーフ
  2. 行政指導に応じられない理由を報告する。→グレー
  3. 行政指導に応じると、虚偽の報告をする。アウト(法律違反)
  4. そもそも報告をしない。→アウト(法律違反)

 このアウトのケースが障害者差別解消法違反になる場合ですな。

 セーフはさておき、グレーとは何ぞやって話ですが、要は「もっかい努力せえ」と何度も指導を受けるという話です。もし上位法や下位法令にこれに反した場合の罰則規定があれば、行政指導に対して何度も応じない状況が続くと、「義務を果たしてない」として行政処分=罰則が下るワケです。

 裁量的行政指導は努力目標なので、応じられればセーフ。応じられない理由が正当であればセーフ(しかし、達成するまで勧告は何度もされる)、正当でなければグレーで再指導。虚偽報告や報告義務を果たさなければ(上位法の条文規定に反するため)アウト、という事です。

 

 もちろんこれは障害者差別解消法に基づいた話であり、関連する法律が違えば変わる話です。

 例えば廃棄物管理法の条項には行政手続法に基づいた処分規定があるため、関連省庁である環境省は事業者に対し行政指導を行い、これに反した事業者を処分する権限を持っています。この処分は行政手続法に反したからではなく、上位法である廃棄物管理法の罰則規定による処分という点がポイントですね。

 だから上で例じた障害者差別解消法に基づいた行政指導(下位法令)における行政処分とは、障害者差別解消法の罰則規定に書かれている処分のみで、それ以外の処分は出来ないんです。

 これは、日本が罪刑法定主義*1を採用しているからなんですね。

 要するに、障害者差別解消法違反とは、

  1. 協議会の情報・秘密を正当な理由なく漏洩する
  2. 行政指導に対して報告を怠るor虚偽の報告をする

 以上の2パターンしか存在せず、これ以外のパターンを持ち出して「障害者差別解消法違反だ!」と騒いでいるのは、障害者差別解消法の条文どころか刑法上の原則も知らず、自分の思い込みで勝手な犯罪を作り出してるウルトラ私刑大好きマンなんですね。一言で云えば、障害者棒を振りかざす知ったかワナビーです。

 今回の件に限らず、上記2点以外の理由で「障害者差別解消法違反だ!」と騒いでいる人がいたら、「それって障害者差別解消法の、一体どの条文に規定されたどういう違反行為なの?」と聞いてあげてください。絶対答えられませんから。

 元々存在しない罰則規定を幾ら見つけ出そうとしたって、無理ですからね。 

 

( ´Д`)「アレやな。他人にやいやい云う前にちょっと落ち着いて、目の前の便利な板なり箱なりでちゃんと調べてからモノ云えっちゅー話やね」

 

 情報はアップデートしないと意味ないからねえ。こうやって懇切丁寧に説明したところで、自分が正しいと思い込んでるバカほど読みゃしねーし。

 デマを流すのは簡単だけど、そのデマを潰すためには何倍もの労力がかかるっつー事実を思い知るわ。

 

*1:どのような行為が犯罪となるのか、またそれに対する処分が何であるか、予め定義されてない規定されてない理由・罪状で裁いてはいけないとする刑法上の原