ちくわブログ

のらりくらりのちくわさんです。

何故かマスコミが報道しない、「奄美空港とバニラエア奄美便は、木島氏とのトラブル以前から障碍者対応を粛々と進めていた」という話。

 【注意】このエントリは「障害者差別解消法の条文を読み間違えた事は認めたけど、結局脳内妄想の激しい id:kuborie は、今日も顔を真っ赤にしながら「わら人形批判」を展開し、恥をかかせたオレの揚げ足を取ろうと必死にもがく。 - ちくわブログ」の後段部分を再編集・加筆した記事となります。書かれてる内容はほぼ同じなので、そちらをすでに読まれた方はあえて読む必要はないと思います。あらあらかしこ。

デマとは「虚偽の事実を伝える事」だけではなく、「意図的に必要な事実を隠す事」でもあるという話。

 木島氏とバニラエアを巡る騒動に関しては、徐々にそのはしご外しが始まっています。

 これはブコメ上や関連したTogetterまとめのコメント欄でも何度も訴えていますが、元々奄美空港バリアフリー化が進められている真っ最中であり、日本で唯一対応が遅れている空港でした。一方、バニラエアが就航した2014年7月以降、利用客が増大して空港収益が上がった事で、ボーディングブリッジの増設、各階への多目的トイレの設置などを含む、急速なバリアフリー化への対応化が進められている真っ最中でした。

 この事実は以下の記事で確認する事が出来ます。

  1. 奄美空港ターミナルビル 増改築工事 - 今日の記事 - 奄美新聞社
  2. バニラエア 関西−奄美大島を新規開設 片道4,780円で行ける南国リゾートの魅力 : Nicheee! | ニッチー! | テレビリサーチ会社がお届けする情報サイト

 それぞれの記事の日付を見ればわかりますが、(1)は2016年9月23日、(2)は2017年1月15日で、障碍者差別基本法の施行は2016年4月1日です。奄美空港とバニラエアは日本で最もバリアフリー化が遅れていた空港&国内線であるにも関わらず、同法施行後半年以内に努力義務を達成するための施策をすでに行い、実行していた事実が判ります。

 ちなみに、奄美空港の増改築工事の落成予定は最速で2018年6月の予定です。それを「対応が遅い!」と詰るのは自由ですが、「合理的配慮がない!」「障碍者差別法違反だ!と詰るのは明らかに現実・事実と比較して齟齬のある批判である事がお分かり頂けるのではないでしょうか。もし貴方が「努力を達成した後でなければ評価しない」というのであれば、それはまさに詮無い事です。

 これが、例えば勝率の低い運ゲーやガチャであれば「結果を見るまで判らない」とする感覚は理解しないでもありません。しかし実際には、余程のトラブル*1が生じない限り、こうした工事や対応は(多少の遅延はあれど)そのまま達成しうるハズですから。

 またバニラエア奄美便自体も元々2016年7月には昇降機を設置し、自力歩行不能な乗客への対応をまさに進めていた真っ最中でしたから、これを「合理的配慮がない!」「障碍者差別法違反だ!」と詰るのもまた同様に詮無い事です。

 

 また、以下の記事では奄美空港に車椅子利用者が直接、車椅子に乗ったまま機体に乗り込めるようにするためのボーディングブリッジが1機しかなく、かつそれをJAL系列が事実上専有していたため、LCCであるバニラエアが使えなかった事実が書かれています。

mananavi.com

じつはPさんが車いすでの搭乗を断られた後、記者はバニラ・エアのカスタマー・サポートに連絡をとっている。それに対し、同社からはお詫びをされたうえで、客の希望時期の関西空港奄美大島便は他社便との兼ね合いもあるため、奄美空港でのボーディングブリッジの使用ができないことが決定している旨の返答があった。同社としてはこれが不便であることは理解しつつも、今回の男性の件と同様に、オープンスポットでの階段を利用した搭乗・降機をお願いしていること、また、介助者が彼女を背負って階段を上ることは、安全上容認できないと判断していることについても記されていた。

  ※上記引用部の文字修飾はちくわさんによる。

 使いたくても使えないのではお断りするしかありませんし、そもそも何故自力歩行不能な身体障碍者の搭乗を拒否するしかないのかと云えば、極めて低価格の奄美便では「非常脱出90秒ルール」を満たせないからです。その事を乗客に伝えるに辺り、「安全上容認できない」として断っているワケです。

「正直に云えばいいじゃん」と思う向きもあるかもしれませんが、そもそも木島氏のようなゴネ方をする人に限らず、バカ正直に「万が一にも当機が事故を起こして墜落したとき、足の不自由な人を助けるためだけに人員を避けない。助かる見込みの薄い人に人員を割くなら、そうでないより大勢の命を救うために動かざるを得ませんので」と云っても納得はしないどころか、むしろ余計に火に油を注ぐだろう事は想像に難くありません。

「人員や予算を増やせば解決するだろう」というのは本末転倒です。それでは結局安くなりませんし、だったら最初から「成田で(障碍者対応が充実している)ピーチに乗ればいいじゃん」という話にしかなりません。

 そもそもの話として、バニラエア奄美便は利用者が少なかった奄美空港の需要を鑑みて、驚くほどの低価格でのフライトを実現し、結果として利用者を増大させるという成果を残し、その結果として障碍者対応に乗り出したワケですから、そうした事情や背景を全く理解せず、単純に人員や予算を増やせば解決すると考えるのは短絡的というものです。

障碍者対応のために、人員と予算を増やしました。その結果、成田からの奄美便と大して変わらない価格設定になりましたがご了承ください」では、バニラエアに安さを求めている人たちにとって、全く意味がありません。

 

 ここからしばらく奄美空港&バニラエアの話題とは話が外れますので、「奄美空港&バニラエアと関係ない話は興味ねーわ」って方は、次の「閑話休題」で始まる文章まで読み飛ばして頂いて構いません。

 

 一般的に消防士*2の救出行動における優先基準は、傷病者(障碍者も含む)>老人>女性>子供>成人男性と云われていますが、これは明確な基準があるワケではなく、消防士個人の経験と救急活動に携わる全ての人間の集合知により、現場判断として機能する命の優先順位です。

 しかし、これはあくまでも消防士が普段から人命救助をするための訓練をしているからこそ可能な判断であり、一般人や救急救命資格を幾ら持っていようとも、適切な装備・人員の取れない乗務員に同じ働きをしろと云うのは、余程のクレーマー体質あるいはお客様は神様じゃゴルァ体質の人でない限り、無理だと理解できると思います。

 一方で患者の重症度に基づき、治療の優先順位を決めるトリアージと呼ばれる救急救命医療で用いられる概念的選択肢があります。これは一時、はてな界隈でもトリアージ論争として話題になりましたが、現実問題としていざ緊急事態を迎えた場合、助かる見込みの少ない傷病者にリソースを割いた結果、本来助かるハズだったより多くの傷病者ないし被災者の命を見捨てるのが正しいのか、それとも助かる見込みの少ない傷病者を見捨て、より多くの命を救うのが正しいのか、その判断をどう取るかはとても難しい事です。

 もちろん理想は全てを救う事ですが、その理想が叶わない場合の話でもあるのです。理想を掲げる人は常に傲慢で、自分の手が汚れる事を想像出来ません。そうであるが故、自分の手が汚れても尚、多くの命を救おうとする人に対し、平気で「全てを救え」と云えるのです。

 オレ自身はデブですし、足が悪いので余り長くは走れません。ですから、いざとなれば切り捨てられる側ではあります。一方で成人男性ですので、消防士の優先基準に従えば一番最後に救出される側の人間です。

 さて、トリアージ論争で「命を見殺しにするな」と批判してた皆さんは、消防士の優先基準に関して妥当だと思いますか? それとも、それすら差別だとして批判しますか? 後者であるなら首尾一貫としていると認められますが、もし前者であるならば、消防士の救命優先基準とトリアージの間にある違いは何ですか? 成人男性の優先基準が低いのはOKで、傷病者の優先基準が低いのはNGな理由は何ですか? 貴方にとっての平等とは、誰にも差をつけない事ですか? それとも身体的・精神的差異を先ず考慮した上で評価すべき概念ですか? であるとするならば、身体障碍者の命と精神障碍者の命はどちらが優先されるべきですか? リソースが限られた中で、誰にでも云える「全てを救うべき」以外の結論が貴方に下せますか? 貴方は自分の手が汚れる覚悟もなく、その結論=命の選択を何人にも批判されずに行えると自信を持って宣言できますか?

 

 閑話休題

 関連する情報を集めて一つに繋ぐと、バニラエア奄美便就航後に「利用客が増大」→「空港収益が増加」→「施設の増改築が可能に」→「ボーディングブリッジの増設が決定」という流れがあり奄美空港バリアフリー化が急ピッチで進んだ理由は「バニラエア就航後、利用者が急増して空港収入が増えたおかげ」と読み解く事が出来ます。この事実は上記でリンクした記事からも読み取れます。

バニラエアは先に成田=奄美大島線に就航して以来、今まで島に来たことがなかった20代、30代の若者を中心に人気が高まり、観光客が急増。一時は宿泊施設やレンタカーの不足などが問題となったが、現在はほぼ解消されたといい、「バニラエアが就航したおかげで島が賑わっている」との声がとても多かった

 ※以上、引用した文章の文字修飾はおいら。

 もちろん、これを2017年6月5日のトラブル時点で読み解けっつーのはもちろん無理のある話だし、知らずに「マジかよバニラエアクソだな」と短絡的に判断しまった事そのものは致し方ない事だと思います。

 しかしてそういう事実は調べれば判る事なのに、全く調べもしないどころか一方的な情報のみを鵜呑みにし、それを指摘されても尚改めないのは、誤りを認めると死ぬ病か謝ると死ぬ病のクズでしかありません。

  

 そも上記のような事実に反する批判が蔓延した原因は、他ならぬ今回の騒動の当事者である木島氏の主観的証言でしょう。

 木島氏はご自分のサイトエントリ

障害者差別禁止法が施行されている、東京オリパラに向けてバリアフリー化を推進しようとする動きの中で、合理的配慮も何もない、こんなことがあることに驚きを隠せません。

  と書いていますが、貴方は奄美空港やバニラエア奄美便が現在進行形で努力義務であるバリアフリー化を達成するために尽力している真っ最中だったという事実を知った上で、それでも尚、木島氏の言葉が全て正しいと思いますか? 奄美空港やバニラエア奄美便が障碍者差別解消法に則り、バリアフリーを達成しようとして動いていた事は、合理的配慮も何もない事ですか?

 また同氏は今回のインタビューで「旅を始めて24年、158カ国に行って、空港も300カ所くらい行ったが、設備がないからとか、車椅子だからとかで乗ってはダメとは言われなかった」と語られてますが、同氏のブログではイギリス国内で飛行機に搭乗使用とした際「あなたは乗せられない。歩けない人はダメだ」と断れた顛末がしっかり書かれています。

 オレは木島氏が嘘吐きだとは思いません。恐らく彼は嘘を吐いてる自覚はなくて、単に覚えてなかったり、その場その場で過去の自分の言動を振り返る事なく、思ったまま・感じたままの事を発言しているだけなのでしょう。

 ただ、彼の発言を一つ一つ検証してみた結果、実際に齟齬がある以上それは明らかなデマですし、そのデマが本人のうっかりで済むレベルの話なら笑い話として終わりますが、一個人や企業・団体の名誉を傷つけるレベルの讒言となるとそうは行きません。実際に事実と齟齬がある以上、裏取りをしないで木島氏の発言の全てを信じるのは大変危険な誤謬そのものと云えるでしょう。

 デマとは虚偽の事実を伝える事だけではありません。自らの主義主張の都合に合わせて虚実を織り交ぜたり、自分に不都合な事実を隠す事もまたデマなのです。 

知らないのは仕方ない。でも知ろうとしない、知って尚改めないのはただのクズ。

  事情を知らない内に軽率な判断を下してしまう事自体は仕方ありません。齎された少ない情報、あるいは一方的な事実を論拠に誰かを批判的に見るのも致し方ない事でしょう。しかし知って尚、あるいはそうした事をロクに調べもしないまま一方の意見のみを鵜呑みにし、他者を批判して愉悦に浸るのは醜悪極まりない愚行です。

 それを指摘されても尚食い下がるのは、意図的であるならばデマゴーグですし、全く意図せずに事実認識を否定するのであれば、それは妄想癖という病気そのものです。詭弁を弄するデマゴーグになりたくないのであれば、常に脳内情報をアップデートする事を心がけましょう。

 恥ずかしいのは誤る事でも謝る事でもありません。誤りを認めて尚、自分の失点を認めて謝罪しても尚、一向に反省しない事なのですから。

*1:例えば「天災や人災で空港施設に損害が出て障碍者対応どころではなくなる」「不祥事で空港収益のプール金がなくなり、改築工事が続行できなくなる」「奄美に乗り入れてる航空業者の大半ないし全てが撤退し、収益が大幅に減衰して改築どころではなくなる」等。

*2:消防士とは正しくは消房吏員の階級の一つですが、ここでは救急救命士その他を含む総称として扱います