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のらりくらりのちくわさんです。

「バニラエアが謝罪したのは違法行為をしたから」というデマについて。

はてなブックマーク - はてなブックマーク - 車いす客にタラップはい上がらせる バニラ・エアが謝罪:朝日新聞デジタル

当の航空会社は謝罪しているというのに、ここでも航空会社の違法行為擁護のコメだらけだな。近年のバリアフリー化の流れを知らないで、君らそれでサービス業が務まるのか?

2017/06/28 18:53

b.hatena.ne.jp

はてなブックマーク - はてなブックマーク - 車いす客にタラップはい上がらせる バニラ・エアが謝罪:朝日新聞デジタル

akikonian 法律上の問題があったからバニラは謝罪対応しているのに、外野がクレーマー問題に置き換えることがもう意味不明。国交省の指針に則った一般的な対応をしていない時点で非常識さを感じる

2017/06/28 18:39

b.hatena.ne.jp

 バニラエアが謝罪したのは法律に反したからではありません。

 あくまでも木島氏の感情に配慮した結果です。それは各種報道でもきちんと書かれています。

www.asahi.com

バニラ・エア「不快にさせた」と謝罪車いすでも搭乗できるように設備を整える。

 

www3.nhk.or.jp

当初、男性は同行者に車いすごと担いでもらって上ろうとしたところ、転落の危険があると制止されたということで、バニラ・エアは、不快な思いをさせたとして謝罪しました。

※太字処理はこちらで施したものです。

 以上のように、いずれも謝罪をしたのは「不快な思いをさせたから」であり、法律上で問題になるような事をバニラエア側はしていません

 

 これに関して「障碍者差別解消法」を持ち出し、同法の違反行為だと批判している人もいますが、これもデマです。同法は理念法であり、罰則規定も条項内に二つ存在しますが、一つは第19条で規定された秘密保持義務に反した場合の罰則で、もう一つは第12条で規定された報告義務違反です。

 

(報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)
第十二条 主務大臣は、第八条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。

 

(秘密保持義務)
第十九条 協議会の事務に従事する者又は協議会の事務に従事していた者は、正当な理由なく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

 

第六章 罰則
第二十五条 第十九条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第二十六条 第十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。

 

 国交省がバニラエアに事実確認を求めたのも前述した第12条によるものですし、それによって何らかの行政処分が下るという話ですらありません。

 そもそもの話で云えば、奄美空港は元々(この事件が起きた段階で)日本で唯一の車椅子の対応が不完全な空港で、それも2017年7月に昇降機を導入する事で対応する予定でした(詳しくは後述)。

 また同法は理念法であると前述しましたが、理念法である以上、障碍者差別に関しての各企業の取り組みは努力義務でしかありません。つまり、事業者が同法の違法行為として裁かれるのは主務大臣や行政の指導・要請に応じなかったり、虚偽の事実報告をした場合です。

 もし仮に感情の問題として対処したのが虚偽報告に当たるのであれば、報告義務違反として国交省の告発で警察が動くハズですが、そういう動きはありませんよね。

   さて、今回の件で「バニラエアが障碍者差別解消法違反を犯した」と論じている人は、一体同法のどの条文を論拠にそう主張しているのでしょうか? 不思議な話ですね。ひょっとして、今回の件で「障碍者差別解消法違反だー」と騒いでいる人たちは、同法の名前しか知らず、条文を読んだ事すらないのではないでしょうか。

障碍者差別解消法第8条

(事業者における障害を理由とする差別の禁止)
第八条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。

 障碍者差別解消法第8条では事業者に対し、障碍を理由として障碍者と健常者の間で不当な差別的扱いをしない事、障碍者の権利利益を侵害してはならない事が記されています。

 また事業を行うに辺り、障碍者からバリアフリー化の提言をなされた場合、その負担が過重でないとき、これについて合理的配慮を行うよう記されています。

 前述した通り、同法は努力義務ですから、航空会社における同法の遵守について国交省は「航空会社に一任している」としており、殆どの航空会社は利用客の事前連絡による対応を持って合理的配慮としています

 これに関して「健常者なら事前連絡なんて必要ないだろ!障碍者だけが事前連絡が必要なんて差別だ!」と騒いでいる方が多数見受けられますが、とんでもありません。事前連絡が必要なのは障碍者だけではなく、妊婦や老人もそうですし、障碍の有無に関わらず、菜食主義や宗教食向けの機内食対応が必要な場合、事前連絡なしに用意するのは不可能です。

 また一方で「現場でフレキシブルな対応が出来ないのはサービスが足りない」みたいな批判も見受けられますが、これはサービスされるのが当然といういわゆる「お客様は神様です症候群」が前提となっている妄言ですね。公共交通機関とはいえ航空会社も利益を目的とする企業ですから、対価以上のサービスは行えません。仮に行うとすれば、それは文字通りの無償奉仕であり、事業者側の純然たる好意の賜物です。

 それでも尚、事前連絡という必要最低限の手段さえ無視し、現場で即応するのが当然であり出来ないのが差別と論じるのであれば、その人にとっての差別とは「自分の要求を対価なしに叶えてくれない全て」という事になるのでしょうね。

 そもそもの話として、仮に事前連絡が出来ない緊急の問題性が生じた場合、これは健常者であるとか障碍者であるとか関係のない話であり、一切は利用者の要求に対し、事業者の譲歩と配慮で決定される事です。「事前連絡は不要、現場で即応すべき」と論じている貴方に質問です。貴方は事前に相談出来るにも関わらず一切の相談をせず、それでも自分の要望を相手が叶えてくれるのが当たり前だと思ってるのですか? あるいは緊急的な問題が生じたとして、それを相談するでもなく相手が解消してくれるのが当たり前だと思っているのですか?

 同法の理念を正しく理解するならば、事前の連絡の有無に関わらず「障害者対応など一切しない」というのは合理的配慮の否定であり、合理的配慮の否定とはすなわち差別です。

 一方で「事前連絡次第で対応します」というのは差別ですか? 本当に? それが差別であるというのであれば、この問題はバニラエアの問題ではなく、国交省や国の制度の問題だと思うのですが。

 余談ですが、障碍者差別解消法に関する内閣府の基本方針として次のような一文があります。

権利条約は第2条において、「「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」と定義し、その禁止について、締約国に全ての適当な措置を求めている。

※太字処理はこちらで施したものです。

 さて、事前連絡次第で障害者に対応するという合理的配慮を否定し、それを差別だと論じている皆さんはどうお考えでしょうか。それでも事前連絡が必要なのは障碍者差別だと否定しますか? ご自分が出来る手段を講じず、結果として健常者差別をしている事に無自覚ではありませんか?

 繰り返しますが、健常者でも特別の対応を望む場合は事前に連絡しますし、緊急時には相談をするんです。特別な対応など不要と云うのであれば、それを必要としない移動手段を使うべきではありませんか?

 自分は他人の配慮を求め、かつ必要としているのに、自分自身は他人に配慮する必要がないと考えるのは傲慢ではありませんか?

 配慮は健常者が障碍者に一方的に施すものではありません。障碍者から健常者に対するほんの些細な歩み寄り=配慮があれば、健常者が障碍者の介助を当たり前の事として自然に行えるようになるとは考えられませんか?

 それは日常で近隣の方と顔を合わせたとき、互いに「おはよう」と挨拶を交わすのと同じ程度の、ほんの小さな配慮であり、互いにとって全く特別な事ではないハズです。

 搭乗拒否の理由に関しての事実と齟齬

バニラ航空、奄美路線での搭乗拒否「階段昇降のできない人は乗れません」

 木島さんは「歩けないことを理由に飛行機に乗れない」と語っていますが、これは事実認識に齟齬があります。正しくは「自力歩行が困難な人は非常脱出90秒ルールに抵触し、安全に配慮出来ないため断られた」です。

 この事実は前述したNHKの報道ソースの中で確認できます。

車イスを利用している大阪・豊中市の木島英登さん(44)が、同行者に車いすごと担いでもらってタラップの階段を上ろうとしたところ、航空会社の空港のスタッフが「転落する危険があり、規則で禁止されている」と制止しました。

※太字処理はこちらで施したものです。

 何処にも「歩けないから飛行機に乗ってはいけない」などと書かれていません。

事前に連絡さえしていれば防げたトラブル。

 今回の事件と極めて酷似した類似判例があります。

判例研究 身体障害者の航空機単独搭乗の拒否と航空会社の債務不履行責任[大阪高裁平成20.5.29判決] : 2010-12|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

判例研究》
身体障害者の航空機単独搭乗の拒否と航空会社の債務不履行責任
田口文夫
阪高裁平成20年5月29日判決―控訴棄却(確定)
(平19(ネ)第2425号,損害賠償請求控訴事件)
判時2024号20頁

http://www.senshu-u.ac.jp/School/horitu/publication/hogakuronshu/110/taguchi.pdf

※上記リンク先はPDFファイルです。

 この判例は、障碍を持ち、規定上で介助が必要な乗客Xが航空会社Yに対し、事前にそれを知らせず当日対応を求めた話です。今回のケースとほぼ同じですね。

 結論から申しますと、敗訴したのは訴えた障害者側(乗客X)です。一審の地裁で敗訴し上告するも、高裁では控訴棄却されて判決が下りました。判決主旨は、乗客X側は全て介助なしで自力で搭乗可能と主張し、介助者と同行せず、かつ予約時に障碍の有無や詳細を航空会社側に一切伝えず、当日そのまま搭乗しようとしました。しかし、乗客Xは言語障碍により意思疎通が困難、かつ身体障害により食事やトイレも一人で行えないという状態。乗客Xは「飛行機が発着するまでトイレも食事も我慢する」と主張するも、生理現象を完全にコントロールするのが不可能である以上、事前通告なしに航空会社Yがそれに対応するのは無理と判断され、搭乗拒否はセーフティ上適法であり、債務不履行責任を問う事は出来ないとの見解が裁判所の判断。

 これは平成20年、つまり9年前の判決ですから、昨年に障碍者差別解消法が施行された日本において、このケースと同じ結論になるとは限りません。しかし、仮に木島氏がバニラエアを訴えたとして、おそらく大同小異の結論になったと思われます。

 高裁における控訴棄却時における裁判長のコメントは以下の通りです。

あえていえば,本判決は「事前に連絡すれば単独搭乗の拒否に根拠はないとした判断に意義がある」

 事前に連絡さえしていれば防げたトラブルという証左です。

「非常脱出90秒ルール」とは?

kotobank.jp

90秒ルールとは - 航空軍事用語 Weblio辞書

 詳しい内容は上記リンク先を参照して貰うとして、簡単に説明すると、これは「緊急時、乗客・乗員全てが航空機から脱出する場合、脱出が90秒以内に達成出来ない旅客機の構造はアウト」という国際条約を根拠とする航空法上のルールです。各航空会社はこれを元に避難誘導の訓練を行います。

 当然、乗客の身体能力に大きな差異がある場合(例えば自力歩行が困難な身体障碍者、妊婦、ご老人、小さな子供が多い団体など)、90秒ルールを達成するためにそれらの介助要員を増やす必要性があるのは、常識的な想像力があれば理解出来ると思います。

重要なのは、航空会社は全ての乗客の安全に配慮するための義務を背負っているという事です。ルールを無視し、無理矢理飛行機に乗り込んだ人が緊急トラブルによる事故で死ぬのはその人の勝手ですが、その無謀な人のために他の乗客が犠牲になるのは本末転倒を通り越した極めてナンセンスな話です。

 このルールを前提すれば、今回の騒動に関する一番の問題が見えてくるハズです。そう、一番の問題は車椅子客の搭乗を断った事でもなければ、行きの便と帰りの便で対応が異なった事でありません。行きの便で「安全上の問題」として拒否した事前連絡なしの車椅子客の搭乗をなし崩し的に許してしまった事こそが一番の問題なんです。

 これこそ国際法に反する愚行であり、むしろ帰りの便の担当者が、頑として規則違反を理由に搭乗拒否をした事こそ、安全運行を維持するための正しい対応と云えるでしょう。

 もちろん、事前に連絡した結果、障碍者の搭乗拒否は有り得る話です。悲しい話ですが、それは様々なサービスを切り落とす事で料金の低価格化を図っている格安航空会社なら尚更です。

 しかしそれは差別だからではなく、自力歩行不能な障碍者(お客様)の安全を確保できないという理由でしかありませんし、格安航空会社よりは高くなりますが、大手の航空会社はそうした安全面に大きく配慮しています。また障碍者向け割引サービスも充実しており、プランによっては健常者の半額以下で搭乗可能な場合もあります。もちろん、健常者がそのサービスを単独で受けられる事はありません。しかしそれはあくまでも障碍者に対する配慮であり、健常者に対する差別ではありませんよね。

 同様に、障碍の有無や様態を航空会社に対して事前連絡し、その対応を求めるのも障害者を差別するためのモノではありません。それは安全を維持するために必要なほんの些細な配慮を、航空会社が請うているのです。この配慮は障碍者のみならず、健常者でも特別な事情・理由があれば必要である旨も前述した通りです。

 想像してみてください。仮に貴方が自力歩行不可能で車椅子利用が必須の身体障碍者としましょう。貴方は航空会社の制止を振り切り、無理矢理飛行機に乗り込みました。そして実際に事故が起きたとき、貴方は誰の介助もなく機体から脱出する事が出来ると断言できますか? 貴方が持ち込んだ(規定に反する)車椅子のために通路が塞がれ、他の乗客あるいは乗員の命が危険に晒される可能性にまで考えが及びましたか?

 恐らく、今回の件で木島氏を擁護し、航空会社を批判した人のほぼ全てがそこまでの考えに及んでいないでしょう。当然です、我々は普段、そうした安全性が何によって保障され、誰によって担保されているか、その事実に余りにも無頓着なのですから。

障碍者への配慮はどうあるべきなのか?何が最善なのか?

 実際問題として、格安航空会社(LCC)に、大手航空会社と同じサービスの質を求めるのは難しいです。そもそも前述した通り、この騒動が起きた段階で、バニラエア側には障碍者の受け入れ態勢が出来ていませんでしたから、どのみち木島氏が事前に連絡したところで(自力歩行が困難な同氏の)搭乗拒否は不可避でした。

 それは以下のハフィントンポストの記事に詳しく掲載されています。

www.huffingtonpost.jp

ハフポスト日本版は、バニラエアの担当者に取材した。担当者は「車椅子ごと担いだり、利用者の体を抱えたりしてタラップを乗降することは、大変危険なので安全上の理由から認めていない。関空奄美線では、自力で歩けない車椅子のお客さまから事前に連絡があった際には、搭乗をお断りしていた」と説明した。

 しかし、だからといって航空会社が差別を助長しているワケではありません。障碍者差別解消法が理念法であり、各事業者のそれが努力義務でしかない点、また障碍者対応を行っているLCCが存在した点、LCCの低価格はあらゆるサービスを最低限度に抑える事で低価格を維持している以上、一定以上のサービス提供が不可避な乗客対応をする事は出来ない点、また事前連絡せずに強行してゴネ得で搭乗する事は安全運行に支障を来たす可能性があった点などを鑑みれば、木島氏の行為は決して障碍者のためなどではなく、彼のエゴイスティックで独善的な目的を果たすための手段=パフォーマンスとしか表しようがないのも事実です。

 後述しますが、元々バニラエアは来月にも昇降機の導入を予定していましたし、今まで拒否していたからとこれから先もそうとは限りません。そういう意味ではタイミングが悪かったと見るべきかもしれませんし、もし木島氏が全ての事情を知った上で強行したならば、それは障碍を盾にした非常に卑劣な行いです。

 そも公共交通機関と一口に云っても、タクシー、バス、長距離バス、電車、航空機のそれぞれで必要な努力義務や安全への配慮は異なります。バリアフリーが進んだ結果、あらゆる公共設備がノーマリゼーション化された未来は理想ですが、その理想を叶えるためには莫大な予算と努力が必要ですし、現状ですぐさま達成出来ない事は誰にでも理解出来るハズです。

「健常者と同じようにLCCのサービスを受けられないのは差別だ!」と主張される方もいますが、そも航空機の利用者は(その料金価格から鑑みて、一般的には)富裕層向けの公共交通機関であり、LCCといえども生活困窮者がおいそれと利用できる類のものではありませんよね。航空券の検索サイトで関空奄美までの価格を検索してみたところ(2017年6月29日現在で)最低価格4550円から最高価格3万円オーバーまで幅広い検索結果が出力されましたが、これは普段の移動手段としてバスや電車を使っている層からすればかなりの高額です。

 タクシーは(距離と単価の相関関係で考えれば)もっと高額で、10kmほど走っただけで3000円を超える事も珍しくありません。しかもタクシーの場合、車椅子に対応したモノは殆どありませんし、あっても料金が割り増しとなり、どうしても健常者が乗る場合より高くつきます。車椅子利用者が乗車できないタクシーは、障碍者に対する差別でしょうか?

 最近はノンステップバスが増えましたが、まだまだ完全ではありません。またノンステップバスでも障碍者用スペースは限られており、それは健常者と比べて不利である点は事実としてあると思います。しかし、それを解消するために各バス会社はどれだけの負担を払うべきなのでしょうか? 利益を無視したり採算を度外視してまでも障害者のために尽くすのは当然なのでしょうか?

 電車でも規定外のサイズの手荷物を持ち込めば手回り品料金を取られますが、車椅子利用者が手回り品の規定サイズを遥かに超える大きさの車椅子に搭乗したまま電車に乗り込んでも割り増し料金を取られません。これは健常者差別でしょうか?

誰でも公共交通機関を低価格で利用出来ないのは、本当に差別なのでしょうか? もしそうであるならば、国交省障碍者差別解消法を理念法とはしなかったハズです。出来る事と出来ない事、達成に際して相応の時間がかかる事、それらを総合的に鑑みた結果の努力義務なのです。一方でその隙間を狙い、サービスを捨てる事で価格を安くしたり、逆に料金は高くなりますがサービスを充実させつつも、障碍者に配慮して障害者割引や特約を採用している公共交通機関は数多く存在します。それはどちらも障碍者差別でもなく、もちろん健常者差別でもありません。映画館のレディースデーが男性差別でないのと同様に、各々の公共交通機関のサービスの形態と対象が異なるだけです。

 今回のトラブルをモンゴメリー・バス・ボイコット事件と同一視している人たちは、普段から「女性専用車両・レディースデーは男性差別だ」「優先席は健常者差別だ」と主張していましたか?

 今回のトラブルを「健常者と同じ料金で利用出来ないのは障碍者差別だ」と論じている人たちは、障碍者割引や障碍者向けの格安ツアーは健常者差別だと批判した事が一度でもありましたか?

 今回のトラブルを人種差別と同一視している人たちは、オタク、ネトウヨ土人国家と云った言葉を蔑視的な意味で用いた事=差別的言動をした事は一度もありませんか?

 遠い地域や他国への旅行に用いる事が殆どの航空機と、日常の移動手段として頻繁に使うバスや電車を無理矢理「公共交通機関」と云う枠組みで括り、必要とされる安全性やその理由、関連法案の差異の一切を無視し、自分のイデオロギーを満たすために無理矢理混同していませんか?

  もちろん、真に平等な社会を目指すならば、あらゆる差異は解消されねばなりません。しかし、そのために負担すべき義務や配慮も当然存在します。そしてその義務や配慮は健常者だけが負うべきモノではなく、障碍者も共に背負うべきモノです。それこそが真に平等であるという事ではないでしょうか。

 安易なアファーマティブアクションは逆差別を生じさせますし、杜撰な差別認定は対立や隔絶を生みます。我々がなすべき事は、一人一人がほんの少し配慮すれば皆が気持ちよく暮らせる社会のはずです。

 例えばの話、清掃員がいるからとあちこちにゴミをポイ捨てするのを正当化してしまえば、世の中はあっという間にゴミだらけになる事は想像に難くありません。

 そもそも航空機のチケットは事前予約で購入するのが当然で、窓口で購入するにせよネットで購入するにせよ、購入時に相談する機会はあったハズです。それを意図的に行わず、事業者にも、また事業者以外の他の乗客に迷惑をかける行為は、果たして本当に差別の解消に繋がるのでしょうか?

 ご老人や妊婦が電車に乗ってきたら席を譲る。

 目が見えない人が危険な場所に足を踏み入れようとしていたら、お声をかけて注意を促し、誘導する。

 耳が聞えない人が緊急アナウンスを聞き取れてなかったら、筆談で警告を促す。

 足の悪い人が横断歩道を渡るのに難儀していたら、一緒に渡ってあげる。

 車椅子の方がスロープを探していたら、スロープの場所まで誘導してあげる。

 これはいずれも、極々小さな配慮です。オレ自身、そのような機会に巡り合った事が何度もあります。徹夜続きで電車の中で倒れてしまったとき、席を譲ってくださった方がいました。感謝の一言しかありません。

 同じように障碍を持つ方も(出来る範囲で結構ですから)健常者に配慮していただけないモノでしょうか。もちろん、席を譲れとか介助してくれなんて話ではありません。貴方の事情を知らない人のために、貴方の事情を出来る範囲で相談して欲しいんです。その小さな配慮が、結果としてお互いを助けるための礎になるハズです。それとも、事前に連絡して対応を求めるのはそんなに困難な事なのでしょうか。配慮をするための配慮を求める事は、それほど差別的な事なのでしょうか。

 もし「配慮とは常に健常者が障碍者に対してなすべきモノであり、その逆は差別だ」とおっしゃるのであれば、それは最早独善的なイデオロギーを前提としたエゴそのものでしかないでしょう。

 そこにあるのは平等ではなく、障碍者を頂点とし、そんな障碍者に対して健常者が無限の配慮をするのが当然という差別的社会そのものです。そんな貴方の世界は(貴方の中で)貴方一人だけの楽園として成立しているのかもしれませんが、そうではない殆どの人たちは皆、自分と自分以外の人のための小さな配慮を、日々それと気付かずに行っている事を知って欲しいと切に願います。

【オマケ】バニラエアの素早い設備導入は「やっちまった案件だから」というデマを垂れ流す id:usi444 について。

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当の航空会社は謝罪しているというのに、ここでも航空会社の違法行為擁護のコメだらけだな。近年のバリアフリー化の流れを知らないで、君らそれでサービス業が務まるのか?

2017/06/28 18:53

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車いすから降り自力でタラップ上る バニラ・エアが謝罪 | NHKニュース

「今回の件について、国土交通省は、バニラ・エアに事実関係を確認」←どうみてもやっちまった案件なので監督官庁も報告を求めると。障害者非難を繰り返す人々は別世界にでも住んでいるのか。

2017/06/28 23:02

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id:usi4444 がまた無知を晒して違法だと騒いでるが、バニラエアは「安全上の理由で断った」のであり、根拠法は国際法の「非常脱出90秒ルール」。バニラエアの謝罪も感情に配慮したものであり、元々法的問題はない。

2017/06/28 23:19

b.hatena.ne.jp

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id:tikuwa_ore バニラの言い訳を鵜呑みしてるが、バニラのその後の素早い設備導入を見たら完全に「やっちまった案件」でしょうが。君みたいに開き直ったら行政指導だな。火星からでもアクセスしてるのかい。

2017/06/28 23:28

b.hatena.ne.jp

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id:usi4444 お前がそう思うんならそうなんだろう、お前の中ではな。ちなみにバニラエアの設備投入が早かったのは、元々7月末に導入予定だったからだよ/ヾ〜〜╋┓>http://www.jiji.com/jc/article?k=2017062800575&g=soc

2017/06/29 00:51

b.hatena.ne.jp

www.jiji.com

 同社は、車椅子ごと担いだり人を抱きかかえたりしてのタラップ乗降を禁止している。既に男性へ謝罪し、7月末に予定していた同空港での車椅子昇降機の導入を今月29日に前倒しした。(2017/06/28-12:40)

※太字処理はこちらで施したものです。

 読めばそのまんまですけど、奄美空港のバニラエアが昇降機の導入を進めていたのは以前からの話で、今回やらかしたから急遽導入したワケじゃないんですよ。事実関係はちゃんと認識しないと妄想炸裂させちゃうから要注意だゾ☆

 つかこの人、何故か「国土交通省は、バニラ・エアに事実関係を確認」という部分を強調してるけど、この全文って実はこうなんですよ。↓

www3.nhk.or.jp

今回の件について、国土交通省は、バニラ・エアに事実関係を確認し、階段の昇降機の設置など改善策の報告を受けたということです。

 これは前述した通り、障碍者差別解消法第12条で規定された主務大臣の求めに応じて報告をしたっつーそれだけの話なんですね。しかも改善策の報告を受けて導入予定を前倒ししたので、それで話は終わり。

 やっぱり、 id:usi4444 は同法の条文すら読んでないどころか、完全に脳内補正による妄想を炸裂させてる事実が明らかになりましたね。事実認識が出来ず、自分が持ち出した法律の条文すら読む事が出来ない脳内世界から出てこれない人は憐れだなあ。同情はしないけど。